行政窓口での申請書類の受け取り拒否は違法行為です

行政書士として申請業務に携わっている皆さまは、行政窓口で「これは受け取れない」と申請を拒絶された経験はありませんか。あるいは、申請したつもりだったのに、実は「預かり」の扱いをされたまま、いつまでも許可証が交付されないといった事態に遭遇したことはないでしょうか。でも、こうした行政の対応は、すべて法令違反です。申請書類を拒絶された場合の対応策について解説していきましょう。

なぜ許可申請が拒絶されるのか
許可に対する処分は、あらかじめ「審査基準」を設定し、公表しなければなりません(行政手続法5条)。この許可基準に合致していれば、すんなりと許可されるべきですが、現実の手続では、時として「受け取り拒否」「預かり」といった対応をされることがあります。

これには、様々な内情があるのですが、ひとつの要因として利害関係者が行政に圧力をかけていることがあります。たとえばある高台の建築計画に対して、安全性への懸念から平地に住む多数の住民が市議会に請願して、賛成多数、あるいは全会一致で採択されることがあります。

ただし、ひと昔前のように一人の議員の声だけで行政判断が左右されることは、今ではほとんどありません。しかし、議会採決となると事情が異なります。本来は市会請願よりも法律や条例が上位なのですが、行政は「議会軽視」と指摘されることを禁忌としていますから、この事態を打開することが困難になります。

申請を拒否することはできない
提出された許可申請書の「拒絶」や「預かり」は、違法であることを心得たうえで行政と対峙すると、道が開けることがあります。

行政手続法において、「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない(7条)」とされているからです。

「申請」とは、申請人が行政の窓口に行き、担当者が中身を確認した上で受付印を押すまでを指すのではなく、「事務所に到達したとき」が「申請」です。言い換えれば、郵送で行政の窓口に到達すれば、すなわちそれが「申請」です。したがって、そもそも申請を拒否するということ自体が、法令上あり得ないということです。

行政で従前よく行われていた手法が、申請書を受け取るものの、それは事前審査のための「預かり」であり、じっくり中身をチェックした後に、法的な「申請」とするものです。しかし、「申請」の定義をしっかりと押えていれば、申請後遅滞なく審査を開始しなければないのですから、「預かり」は不作為であり、違法行為だと主張することができます。

届出は提出した瞬間に有効になる
不思議な光景を目にしたことがあります。ある届出をした人が「3週間前に届出をしたのに書類が返ってこない」と窓口で怒っているのです。この行政機関は、届出をいったん預かって、中身を審査したうえで、受理印を押して返却というシステムを取っていたようです。

しかし、届出とは、「機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする(同法37条)」ものであり、その内容を「認める」「認められない」といった行政の判断は予定されていません。

届出に受理印を押してもらえない、あるいは「届出済証」を交付してもらえないという事態が発生した際には、行政手続法第37条を根拠に、なぜそのような対応になるのかを問い質す方法が有効です。

 

2023年8月11日 T様ご執筆(滋賀会)

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