現場から処分場に直行~産業廃棄物処理業許可申請について解説します
産業廃棄物処理業許可申請は、新規の場合、解決すべき課題が多く、ハードルが高いと思われている方も多いのではないでしょうか。この記事では、その中にあって比較的許可証を取得しやすい、「現場から処分場に直接廃棄物を運ぶ」業務形態の許可申請について解説します。
産業廃棄物許可申請とは
産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類などの「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に定められた廃棄物をいいます。この産業廃棄物を処理するのに必要なのが産業廃棄物処理業許可です。
4種類の許可
産業廃棄物処理業許可は、業務形態によって次の4種類に分類できます。
① 積替え・保管を含まない収集運搬……排出元から集めた廃棄物を、中間処理施設または最終処分先等に直接運びます。
② 積替え・保管を含む収集運搬……収集した廃棄物を積替え・保管施設において積替え・保管し、中間処理施設または最終処分先等に運びます。
③ 中間処理……焼却・破砕・中和等により、減量化、安定化を図ります。
④ 最終処分……法に定める基準に従った構造を有する施設(埋立処分場)で、廃棄物を埋め立てます。
この中で、実際に相談が多く、許可証を取得しやすいのが、「①積替え・保管を含まない収集運搬」業務の許可です。
許可の要件
産業廃棄物収集運搬業(積替え保管なし)の許可申請に際しては、次に示す要件を満たす必要があります。
収集運搬の用に供する施設
申請者は、産業廃棄物が飛散、流出せず、かつ悪臭が漏れるおそれのない運搬車、運搬容器その他の運搬施設を有する必要があります。
ダンプトラック、吸引車等の車両、ドラム缶、フレキシブルコンテナバック等の容器など産業廃棄物の性状、形状、量に応じた施設(車両および容器)が必要です。これらの容器は、写真提出が求められます。また申請者は、これらの施設を継続して使用する権原を有していなければなりません。
産業廃棄物処理業許可取得のための講習会
役員または廃棄物処理法施行令第6条の10に規定する使用人は、産業廃棄物処理業を的確に行うに足りる知識および技能を有していなければなりません。許可権者が指定する講習会の収集運搬課程を修了することで、知識および技能を有するとみなされます。
講習会修了証の有効期限は、本申請受付時点において、修了の日から起算して新規講習会は5年、更新講習会は2年です。講習会は、収集運搬業の新規講習は2日間の日程で行われます。開催日時もまばらで、定員があるので、余裕をもって日程を押えておく必要があります。
経理的基礎
申請者は産業廃棄物の収集または運搬を継続的に行える経理的基礎がなければなりません。経理的基礎を有すると判断されるためには「利益が計上できていること」「債務超過の状態でないこと」が必要です。
これらの観点により経理的基礎の有無を判断しますが、利益が計上されていない場合や債務超過の場合は、追加資料が必要になります。
欠格要件
申請者(法定代理人、法人の役員、株主または出資者、政令で定める使用人も対象)が次のいずれにも該当しないことが求められます。
許可後に次のいずれかに該当した場合は、当該許可の取消しなどの処分が行われます。
① 廃棄物処理法に違反して5年が経過していない者
② 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者
③ 成年後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
④ 禁固刑以上の刑を受け、5年を経過していない者
許可申請の流れ
産業廃棄物処理業許可の許可権者は、各都道府県知事です。許可申請(積替え保管なし)は、県庁などの担当部署において、次のような流れで進められます。
① 事前相談……許可申請書に事業計画等審査願を添えて1部(正本)提出します。このときには、収入証紙は貼付しません。講習会の有効期限が過ぎている場合は、受け付けられません。
② 書類不備の連絡
③ 補正書類の提出
④ 事前相談の終了
⑤ 申請……収入印紙を貼り付けて申請します。
⑥ 審査
⑦ 許可証の交付
申請手数料
申請手数料は、新規の場合、全国一律で81,000円です。
許可書交付までの期間
許可証交付は、申請から1カ月~2カ月を要します。余裕をもって準備、申請をしましょう。
許可申請の必要書類
許可申請書は各都道府県のホームページからダウンロードします。添付書類は次のとおりです。
① 住民票(本籍地記載)
② 登記されていないことの証明書
③ 印鑑証明書
④ 運搬先の処分業許可書のコピー
⑤ 定款のコピー(法人の場合)
⑥ 講習会修了証のコピー
⑦ 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別中期書【過去3年分】(法人の場合)
⑧ 法人税の納税証明書【過去3年分】(法人の場合)
⑨ 車検証のコピー
⑩ 車両の写真
⑪ 確定申告書【過去3年分】
許可申請の注意点
産業廃棄物処理業許可申請(積替え保管なし)に際しては、いくつかの注意点があります。
予約をする
基本的に予約がなくても受け付けてもらえますが、受付時の書類チェックに時間を要するため、先客がいた場合長時間待つことになります。多くの自治体では予約枠を設けていますので、事前に予約をしてから申請した方が安心です。
自治体によって体裁が異なる
自治体によっては、書類にインデックスを貼るよう求められることがあります。各自治体独自の体裁がありますので、申請に際しては、あらかじめ書類の体裁について確認をしておいた方が安心です。
申請代理は行政書士に依頼を
行政書士でない者が、産業廃棄物処理業許可申請書を、有償で他人の依頼を受け作成することは、行政書士法により禁じられています。申請代理は、必ず行政書士に依頼してください。
2023年7月12日 T様ご執筆(滋賀会)
ご利用に際して生じた一切の不利益も、当方および執筆者が責任を負うものではございませんので、予めご了承下さいませ。
コメントを残す