行政窓口での申請書類の受け取り拒否は違法行為です

行政書士が取り扱う許可申請や届出の中には、公開されているマニュアルだけでは作成できないものがあります。その場合、役所の担当者に直接質問をして作成する方法が最も確実です。

水掛け論の水は苦い
しかし担当者とはいえ、すべての人が業務に精通しているわけではありません。特に人事異動が行われる春先は、業務に精通していない職員が窓口で対応する機会が増えます。説明どおりに申請書を作成したのに、実際に提出したらダメ出しをされて最初からやり直しをしたという苦い経験を持つ方もいるのではないでしょうか。

「あの時、こう言いましたよね」と担当者に詰め寄っても、「言ってない」 とシラを切られるばかり。激昂して大声でも出そうものなら、奥から管理職らしき人が出てきて「まあまあ」と宥められ、挙句に「水掛け論はきりがないから、ここは仕切り直しをしましょう」と相手のいいようにお茶を濁されるのがオチです。

それでは、後ろ盾のない行政書士はどうやって我が身を守ればよいのでしょうか。

協議議事録を作成する
重要な業務を依頼されたら、役所の担当者とのやりとりをノートに記録して、事務所に戻り次第「協議議事録」あるいは「協議摘録」としてまとめてください。

議事録に「協議年月日、時間、場所、担当者の名前」を記すのは基本です。名刺を貰えることは、ほとんどありませんから、「担当者の名前」は名札で確認してください。名札を付けていないような職員は協議相手として不適切ですから、名札をつけるよう要求するか担当者を変えるよう求めましょう。

「議事内容」には、こちらの質問と相手の回答を簡潔に書き込みます。Q&A形式でもかまいません。議事録の最後に『この協議議事録に誤りのある場合は、ご連絡ください、速やかに修正します』と記し、事務所の連絡先を明記します。さらに、協議時に提示した地図や写真などがあれば写しも添えておきます。

ここまで読まれた方の中には、「勝手に作成した書類なんか意味が無い」と思われる方もいるでしょう。たしかにそのとおりです。このままだと単なる私文書にすぎません。しかし、私文書を公文書に転換する秘策があるのです。

私文書が公文書に変身
作成した協議議事録を担当者の所属する部署宛てに送付します。ここでは宛先を『○○市役所○○課御中』と部署名にするのが大事なポイントです。間違っても、応対した担当者名を宛名に記してはいけません。

担当者宛てだと、アルバイト等の職員が単純に仕分けして、担当者の机の上に直行します。役所といえど堅い郵便物ばかりでなく、個人宛にラウンジバーからの案内や情報会社からのDMなども届きます。これらは私物扱いです。せっかく苦労して作成した議事録も、それらと同列になってしまい、担当者の机の奥深くしまい込まれ、やがて廃棄されるる可能性は十分にあります。  

しかし、部署名宛てだと、アルバイトや若手職員では誰に手渡していいのか判断ができませんから、庶務担当の職員に判断を委ねることになります。この職員が開封して業務上の文書だと判断すれば、その郵便物に収受印が押され公文書として文書収受台帳に記載されます。

1週間ほど待って訂正等の連絡がなければ、送付した協議議事録を情報公開請求してください。ほどなく開示の決定がくだされますから、公開された文書の写しを入手します。それはすでに私文書ではなく、役所から入手した公文書の写しですから、もう「水かけ論」だと一蹴されることもありません。協議録が共通認識として共有され、さらに次の段階に協議を進められるのです。   

 

2023年9月13日 T様ご執筆(滋賀会)

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