遺言書作成業務を行う際の注意点とは?

遺言書の作成業務は、行政書士が扱う業務の一つです。ひと昔前は遺言書を作成する人は少数でしたが、「終活」を行う高齢者が増えたことで、遺言書の作成について相談を受けたり、依頼を受けたりすることが多くなりました。ここでは、「自筆証書遺言」を例に取り、遺言書作成の流れや注意点などについて、詳しくご説明します。

■遺言書作成のメリットとは?
民法では、遺産の相続について、相続人の範囲、相続の順位、相続の割合が規定されています。従って、人が亡くなった場合には、この民法の規定に従って、故人の遺産を分割、相続すれば問題はない、ということになります。

しかし、遺産の中には分割しにくい家や土地などの不動産があったり、故人が特定の相続人にある遺産を相続することを希望したりする場合があります。

このような場合に、故人が遺言書の中で、「この遺産を○○に相続してほしい」という遺志を伝えておけば、遺産の分割、相続がスムーズに進む可能性があります。

■遺言書作成の流れ
まず、遺言作成の依頼が来たら、依頼者に現在所有している財産の目録を作っていただくことです。「財産目録」と聞けば、難しい印象ですが、大まかに不動産(家、土地)と動産(預貯金等)に分けて、自分名義の財産を一覧表に書き出してもらえば良いのです。

その次に、依頼者の法定相続人に当たる人を特定します。そして、自分名義の財産を誰に相続したいのかを確認します。

それらの情報が分かったら、「遺言書」の原案を作成し、依頼者に確認してもらいます。もし、依頼者から修正の要望があったら、修正を施した上で、再度確認してもらいます。

自筆証書遺言の場合は、行政書士が作成した遺言書の原案を依頼者が自筆してもらい、最後に作成日の日付を書き、署名・捺印をして完成となります。

■遺言書作成業務の注意点とは?
遺言書作成の業務を行う上で、注すべきことは2点です。

まず、「遺留分」への配慮です。遺言書は、依頼者の要望を極力盛り込んだ内容にすることが大前提です。しかし、一部の法定相続人に多額の遺産を相続させた場合、他の相続人は納得してくれない可能性があります。特に、民法で認められている「遺留分」に全く配慮していない内容だった場合、実際に相続が始まれば、相続人の間で紛糾することが考えられます。

2つ目は、相続内容に対する依頼者の思いを尊重することです。「遺留分」に注意しながら、依頼者の意向を十分に反映した相続内容になるようにする必要があります。ただ、依頼者が一部の法定相続人に高額な財産を相続させたいという要望があれば、なぜそのような思いを持つのかを遺言書に記載するように、アドバイスをします。

■まとめ
自筆証書遺言は、費用をほとんどかけず作成することができます。しかし、遺言書としての要件を備えていなければ無効になったり、あるいは一部の法定相続人に偏った内容であれば後にトラブルに発展したりします。行政書士として、遺言書作成の依頼を受けた場合には、依頼者の意向を十分に汲み取った上で、後のトラブルを回避できるように、アドバイスしなければなりません。

 

2022年8月3日 I様ご執筆(福岡会)

ご利用にあたって
上記情報は、あくまで一参考情報としてご利用願います。

ご利用に際して生じた一切の不利益も、当方および執筆者が責任を負うものではございませんので、予めご了承下さいませ。