運送業に必要な一般貨物自動車運送事業許可の要件と流れを解説

運送業とは、トラックを使用して他人から運送の依頼を受ける事業をいいます。この運送業を経営したい場合には、一般貨物自動車運送事業の許可が必要になります。

許可の要件
一般貨物自動車運送事業の許可を取得するには、「人」「物」「金」の要件を整えなければなりません。それぞれどのような要件なのか解説をしていきましょう。

「人」の要件
「人」の要件は次のとおりです。

● 申請者の法令試験への合格……許可申請後に法令試験を受験して、2回以内に試験に合格できない場合、その申請は却下となる。
● 申請者が欠格事由に該当しないこと……懲役や本許可の取り消しから5年経過していないなどの欠格事由に該当しない。
● 5人以上の運転者……事業用自動車を運転することができる自動車免許を所持している者
● 運行管理者……運行管理者試験の合格者または5年以上の実務経験と5回以上の講習受講者
● 整備管理者……1級~3級の自動車整備士資格者または2年以上の実務経験を有する地方運輸局長の開催する整備管理者選任前研修の修了者

「物」の要件
「物」の要件は次のとおりです。

● 営業所……各種法令に適合した建築物で、使用権原を有するもの
● 休憩・睡眠施設……営業所もしくは車庫のいずれかに併設されたもの
● 車庫……営業所から一定の範囲内に存在している。前面道路の幅員は原則として6.5メートル以上ある。
● 車両……貨物自動車が5台以上ある。

「金」の要件
「金」の要件は次のとおりです。

● 自己資金……「車両費(賃料は12カ月)+土地・建物費(賃料は12カ月分)+保険料+各種税+運転資金+登録免許税」が必要。運転資金として人件費・燃料費・油脂費・修繕費などは6カ月分必要。これらの自己資金は、申請してから許可が出るまでの期間、確保しておく。
● 損害賠償能力……対人賠償額が無制限、対物補償額が200万円以上の任意保険に加入する。

添付書類
一般貨物自動車運送事業の許可申請に際しては、次のような書類を添付します。

● 履歴事項全部証明書と定款(法人の場合)
● 戸籍抄本および住民票(個人事業の場合)
● 残高証明書
● 履歴書(代表者、法人の場合は役員全員)
● 運行管理者資格者証の写し
● 整備士の資格者証(1~3級のいずれか)または整備管理者選任前研修の修了証の写し
● 営業所および休憩室・睡眠施設の使用権限がわかる登記簿謄本または賃貸借契約書の写し
● 営業所および休憩室・睡眠施設の位置図、平面図、求積図と写真
● 車庫の使用権限がわかる登記簿謄本または賃貸借契約書の写し
● 車庫の位置図、平面図、求積図と写真
● 事業用自動車の車検証および使用権限を証明するための売買契約書・リース契約書など
● 道路幅員証明書または幅員が車両制限令に抵触しない旨の証明書

許可申請の流れ
一般貨物自動車運送事業の許可申請は、次のような流れで進めていきます。

1.一般貨物自動車運送事業許可申請書および添付書類を管轄の地方運輸局に提出
2.役員法令試験を受験……奇数月に開催。個人事業の場合は代表者、法人の場合は常勤の役員が受験者となる。
3.法令試験合格後、地方運輸局で書類審査開始
4.地方運輸局から補正指示……申請から3カ月~5カ月後
5.2回目の残高証明書を提出(1回目と同一の金融機関・口座の残高証明書)
6.補正完了
7.許可の通知……申請から4カ月~6カ月後
8.登録免許税納付……12万円
9.許可証交付式……原則として代表者が出席

許可申請をする際の注意点
一般貨物自動車運送事業の許可申請に際しては、いくつかの注意点があります。

代理申請は行政書士の独占業務
一般貨物自動車運送事業許可申請は、相当の専門知識が必要となります。

そのため、保険会社やトラック協会の関係者に申請の相談をするケースも少なからずあります。しかし、申請に関する書類作成や代理申請まで依頼することはできません。

行政書士以外の者が、これらの行為を行うのは、明らかな法令違反であり、処罰の対象になるからです。一般貨物自動車運送事業許可申請に関する書類作成や代理申請は、必ず行政書士に依頼してください。

補正作業の完成度を高めることが許可証交付の短縮になる
一般貨物自動車運送事業許可は、どんなに急いで書類を作成しても、許可証が交付されるまでに申請から4~6カ月を要します。状況によっては、それ以上の期間を要することも少なくありません。

それでは、許可証交付までの期間の長短はどのようにして決まるのでしょうか。

一般貨物自動車運送事業許可申請の標準処理期間は、3~5カ月とされていますから、補正指示が出されるまでの期間は、誰が申請手続をしても大きな差は生じません(役員法令試験の合否による差はあります)。しかし、補正作業後の再審査では、書類の完成度合いによって、許可証交付までの期間に大きな差が生じることになります。

つまり、一般貨物自動車運送事業許可申請では、補正指示後の提出書類作成に万全を期すことによって、スムーズな許可証交付が実現できるのです。

 

2023年5月12日 T様ご執筆(滋賀会)

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