職務上請求書を利用する際の注意点とは?

行政書士が取り扱う業務の一つに、遺産分割協議書作成等の「相続業務」があります。この業務では、戸籍謄本や住民票等が必要となりますが、行政書士は、「委任状」が不要な「職務上請求書」を利用することができます。但し、十分に注意して使用しないと、トラブルを招く可能性があります。

■職務上請求書とは?
戸籍謄本や住民票は、個人情報の最たる証明書類ですから、その取得には制約があります。取得できる人は、一般的に本人、子・孫・父母・配偶者等の直系親族に限られます。

その他の人が請求する場合には、「委任状」が必要です。つまり、本人や親族が第三者に委任しなければ、実質的に入手できることはできません。

しかし、行政書士は、「委任状」なしで、第三者の戸籍謄本や住民票を市区町村役場に請求することができます。この際に用いるものが「職務上請求書」です。これは、2枚綴りの50セットが1つの冊子になっており、所属する各都道府県の行政書士会から購入します。

■職務上請求書のポイント
職務上請求書の記載については、各都道府県の行政書士会から「記載例」が出されていますし、請求書の裏面に注意事項がありますから、それらを参考にして、正確に丁寧に記載します。

職務上請求書の記載で、最もポイントになるのは、「利用目的」の記入です。

「相続手続きに必要だから」等の記載では、不十分です。例えば、「○○さんから、遺産分割協議書の作成依頼を受け、○○さんの被相続人である△△さんの『戸籍全部証明書』が必要だから」等と、できるだけ具体的に記載する必要があります。

■職務上請求書の注意点
職務上請求書を使用する際に、最も注意すべきことは、利用目的の明確化です。

先程もご説明したように、「利用目的」はできるだけ具体的に記入する必要があります。各都道府県行政書士会で対応は多少異なりますが、職務上請求書を新たに購入する際には、古い職務上請求書の内容をチェックされるシステムになっています。これは、職務上請求書を適正に使用されているかを確認するものです。

職務上請求書は、第三者の戸籍謄本等を「委任状」なしに取得できるものですから、行政書士会側も、かなり神経質になっています。また、身元調査やストーカー行為に利用するために、当事者以外から戸籍謄本等の依頼を持ちかけられて、金銭ほしさについ売り渡した行政書士も、実際過去に存在しています。

仮に不正利用等が判明した場合、その行政書士だけでなく、全国の行政書士や行政書士会全体の問題になってきます。

くれぐれも、職務上請求の重要性を肝に銘じ、決して不正に荷担しないようにしなければなりません。

■まとめ
職務上請求書の利用は、行政書士に与えられた特権です。適正に利用すれば、かなり便利な制度ですが、不正利用すれば、多大な被害と影響を与えます。適正利用することで、職務上請求の制度が成り立っていることを常に念頭に置いて、利用しましょう。

 

2022年4月9日 I様ご執筆(福岡会)

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